今年の夏もフェーンだよ
先日、家の近所で盆踊りが行なわれていたので、ちょっと様子を見に言ってきた。
何を隠そう、子どもの頃からお祭りが大好きで、盆踊りで腕をならした記憶もある。
大人になってそういえば盆踊りなんてとんと行かなくなったけど、子どもができてまた意識が地元のお祭りに向いてきた。
それは隣のマンションの敷地内でやっている、小さな盆踊りだった。メインは白いテントがはってあるところで売っている焼き鳥やらビールで盆踊りはさほど盛り上がってなかった。
炭坑節が始まった。誰もが知っている定番中の定番!
黄色いTシャツのスタッフ二人が踊り始めた。一人はおばちゃん、もう一人は動きがぎこちない若い女の子。自分の血が騒ぐのがわかっていたので踊りの輪に加わった。
しかし、何か変なのだ。
見本の黄色いTシャツのおばちゃんが炭坑節の振り付けが、なぜか勝手に省かれショートバージョンになっている。
当然リズムが狂ってきて、つまづきそうになる。そこに後ろの人もつまづいてなんだかぐだぐだーになってしまった。でも、自分だけ正しい踊りで踊ると、きっとこの輪はもっと乱れるだろう。仕方なく一曲踊りきったが不完全燃焼だった。
おもいっきり盆踊りを踊りたい。いつのまにか、そんな思いがふつふつとわいてきた。それからはというと、なにかとお祭りに顔を出した。しかしどこも「本気度」が足りないのだ。
そんなとき、姉に誘われたのがみなとみらいで行われる盆踊り大会だった。
臨港パークは普段犬の散歩をする人や寝そべるカップル、家族づれの団欒などで賑わっていたが、この日はやぐらが建てられ浴衣姿の男女で溢れかえっていた。
みなぎる熱気、やぐらに注がれる熱い視線。これぞわたしが、もはや盆踊りの道場破りと化したわたしが追い求めた姿である。ガチで踊るためだけに来たつわものが、やぐらのまわりに集結していた。ここに恥はない。
途中から踊り始めた曲は臨港パークのある横浜市西区の西区音頭。さっぱり知らない曲だが、腕慣らしにはちょうどいい。やぐらのプロフェッショナルを参考に踊り狂った。
ちなみにぴっぴ(息子)は連日の母の盆踊り道場破りの成果か、自ら踊らせてと手を差し伸べてくるぐらいの盆踊り好きになっていた。普通なら人が多すぎて泣いてしまってもおかしくないのに、我が息子は果敢にも列の中を泳ぐように進む。成長したなぁ…。
さぁ、さぁ炭坑節はまだかい?!
しかし次は東京オリンピック音頭。これが狂ったように難しい。振り付けもそうだが、途中曲調が変わったり速さが変わったり、誰だこんな難しいの作ったのは!と思う代物だった。せっかく観光客の外国の方も多く訪れていたが、これでは万人には踊れない。
次こそはとまっていると、またも浜っ娘音頭という知らない曲だった。この曲は今も頭を離れない。「♪今年の夏もフェーンだよ〜」というフレーズ。えっと、フェーン現象のことですか?!なんだか音頭に地理用語が入っているのも不思議なもんだ。
まだかなぁと思っていると、今度はバブリーダンスで人気を博した「ダンシング・ヒーロー」が始まる。あれ、盆踊りでは?!とか思っていると勝手に体が動き出して一番盛り上がった。っフー!と雄叫びをあげながら大人が行進するのは圧巻。
とかなんとかいっていると休憩に入ってしまった。盆踊りに来てから、旦那はビールを飲み、骨つきのフランクフルトを食べ、ちまきを食べ…とひとしきり楽しんでから盆踊りに参加したのでけっこういい時間になってしまった。帰る時間を考えると、あと一曲というところ。
焦る気持ちに反して、最後の曲(といっても運営側からすると休憩後最初の曲)は
アンパンマン音頭だった。
1歳の息子ぴっぴは大喜び。旦那の肩車で手をブンブン回して踊っていた。これでよかったのかもしれない。
結果的に炭坑節は踊れなかったけど、とっても楽しい盆踊り大会だった。
出店もたくさんあり、それなりに食べたけど、やっぱり踊ってお腹が空いたので最後はOKストアでお弁当を買って食べた。
終始、この盆踊り道場破りを静かに支えてくれた夫が一言。
「これは毎年の恒例行事にしたいね」
たしかに。また来年も来よう。